「グロテスク」 by 桐野夏生

上述の桐野夏生作『グロテスク』について、作者本人が次のように話しているのを見つけた。

http://www.kirino-natsuo.com/

作者のコメント
<中略>
どうして、あのOL殺人事件を取り上げたのか。よく聞かれる質問ですが、私は事件当時、マスコミがなぜ熱狂して報じているのか、全く理解できませんでした。一流企業勤務、一流大学卒、夜の街娼。こういう「記号」に男たちが発情しているような印象を受け、好奇心だけで被害者の身許や行動を露わにしようとする様が非常に不愉快だったのです。もしかすると、世間の男たちを発情させる「記号」そのものが、彼女を苦しめ、夜の街に立たせるに至ったのではないか、という印象を強く持ちました。だから女の私が書いてみようか、と思った次第です。
とはいえ、私が書くことによって、要らぬ関心を煽ったり、関係者の方に迷惑がかかるのではないかということが不安でした。しかし、現代社会に生きる女の辛さや息苦しさ、性という不可思議なものに侵される思いを何とか書き切れば、違うものも見えてくるのではないか、と冒険することを決心したのです。

なるほど。

僕も、事件当時、マスコミがなぜ熱狂して報じているのかが、想像はできるけれど、今ひとつ理解できないほうでした(別に不愉快ではないけれど。発情すると言われている側だしな)。

ただ思うのは、この作者はこの作品を書くことでなにか違うものは見えてきたのでしょうかね。これについては、本作以降の作品を読めばわかるのでしょうかね。そこはちょっと気になります。