ITmedia : WiMAX 導入が急務と NRI

野村総研の上席コンサルタントが「WiMAX の導入は急務だ」と指摘した ITmedia の記事のクリッピング

3Gでは需要充たせず。WiMAX導入が急務とNRI
http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/0507/26/news042.html

 桑津氏は2008年の段階で、ノートPCやPDAなどの汎用データ通信向け機器が770万台、携帯AVプレーヤー、デジタルカメラ、携帯ゲーム機などエンターテインメント用途で680万台、宅内にあるPCやビデオレコーダー、ゲーム機、大型テレビなどの宅内無線接続の需要が700万台──合計で約2150万台の需要が見込まれると話す。

 こうした2000万強の需要に対し、「(携帯電話のような)FDDマクロセルでは、この需要を収容できない。(WiMAXなどに)80MHzくらいあれば、2000万の携帯電話以外のものも収容できる」(桑津氏)とした。

「宅内無線接続の需要が700万台」とあるが、これは近距離接続の需要だろうし、有線系のブロードバンドの普及状況からみても 802.11n でいいでしょう。わざわざ WiMAX にする必要はないかと。

 郊外など広いエリアをカバーすることを前提に作られたマクロセルの3Gに対し、Wi-FiWiMAXは狭い範囲をカバーするマイクロセルに適する。NRIでは、飽和の可能性があるのは都市部だと見ており、都市部でWiMAXを効果的に導入することで問題を解決できるとする。

マクロセル - マイクロセルの議論は、どの程度の電波出力で利用可能であるかによっては変動するので、この分類は正しいとはいえない。

あと、「飽和の可能性があるのは都市部だ」というのはちょっと考えればわかること。

で、「都市部でWiMAXを効果的に導入する」ためには、利用者の立場からすると、低い周波数帯の利用によってデッドスポットを少なくすることと、標準度の高い技術(周波数?)を使用することでサービス/プロダクト提供価格を下げる必要がある。

 日本では平成電電YOZANKDDIイー・アクセスなどがWiMAXの実験を始めているが、利用周波数帯などは不透明なまま。世界的に標準化が進む中で日本は立ち後れている。

 「世界マーケットのハーモナイゼーションを前提とするとWiMAXはやらざるを得ない。TDD換算で80MHzの帯域を用意しなくてはならない」と話す桑津氏は、日本側が世界に向けてイニシアティブを取れる方法がまだあると話す。次世代PHSWiMAXとして推進していく方法だ。

 「日本側がイニシアティブを残し得るのが、PHSの1.9GHz帯、TDDの2GHz帯。周波数が低くより使い勝手がいいバンドにWiMAXを移していく。次世代PHSOFDM系TDD。WiMAXではないが、WiMAXとのハーモナイゼーションは図れるのではないか」

この議論は 2G の PDCPHS の最初のころの議論と同じ。日本独自の技術・利用形態を推し進めることでイニシアティブが取れるというのは、どうかね。国内でのセミクローズドな仕様の WiMAX の普及を進めると、NECやパナソニックといった国産メーカーはそれなりに収益が出るものの、グローバル市場ではシェアもとれず存在感もないという、いまのケータイ電話市場と同じことになると予想できる。

「世界的に標準化が進む中で日本は立ち後れている」という煽り系の現状認識の中で、「世界マーケットのハーモナイゼーションを前提とする」のであれば、むしろ、韓国の WiBro を導入するとか、北米と同様に 2.5GHz 帯で通信インフラを整備したほうがよいでしょう。そのほうが、「世界マーケットのハーモナイゼーションを前提とする」ことができるわけだし、端末側の WiMAX 採用コストがさらに下がるわけだから、利用者にとってはありがたい話となる。で、これまでの通信サービス・市場における日本の存在感は、通信インフラそのものではなく、さまざまな利用シーンにおけるアプリケーションにあるのだから、その分野でイニシアティブをとるのが戦略として正しいような気がするけど、そうするとメーカー的には苦しくなるわけだから、このコンサルタントの論は、国産メーカー擁護のための話として見ておけばよいかと。