Emerging Technology 研究会「eBayはSkypeをなぜ買収したのか?」

9月下旬の米国出張以来、なんとなしに体の感じが良くなかったり、こまごまとしたことが多かったりでしばらくエントリを書いていなかったが、ようやく復活。

昨日の土曜日、Emerging Technology 研究会に行ってきた。今回のお題は「eBayはSkypeをなぜ買収したのか?」。所用のため、研究会後の懇親会には参加できなかったが、研究会そのものでは、eBay による Skype の買収を複眼的に議論した。

10月開催報告:eBayはSkypeをなぜ買収したのか?
http://sw.cocolog-nifty.com/et/2005/10/10ebayskype_29f2.html

研究会が始まるまでは、eBay も Skype も「情報が流れる経路」を押さえているポジションなので、そこを相互補完的に強化したいのだろう、ただ、それにしては買収金額が高すぎるのでは、と漠然と考えていた。こんなエントリを目にしていたからというのもある。

eBayによるSkype買収。
http://d.hatena.ne.jp/hidetaka75/20050914

で、研究会が始まり、議論の中で「情報が流れる経路」という点を「トランザクション」と表現してもらって、ちょっとスッキリ。eBay と Skype の共同体で、売りに出している商品の情報やら、極めて個人的な会話やらを C2C なメッセージ・トランザクションとして押さえてしまえば確かに強い。設備投資が極めて少ない NTT ドコモのようなもの。で、NTT ドコモは「おさいふケータイ」や「Edy」などで、決済系を押さえに行ってるわけだが、eBay には Paypal 事業があるので、そこをうまく強化すれば、C2C 分野でメッセージだけではなくて、金銭的なトランザクションも押さえることができる。

せっかくなので、eBay における Paypal のビジネス規模を、2005/Q2 の数字から拾ってみた。

eBAY INC. ANNOUNCES SECOND QUARTER 2005 FINANCIAL RESULTS
http://investor.ebay.com/news/Q205/eBay072005-987987.pdf

2005/Q2 における eBay 全体の売り上げは 10.86 億ドル。2004/Q2 の 7.734 億ドルと比較すると、40% の増加。各事業ごとの 2005/Q2 の売り上げは、U.S. Marketplace が 4.236 億ドル、International Marketplace が 4.188 億ドル、Payments つまり Paypal 事業が 2.439 億ドル。

(米国の)オークション市場が今後それなりに飽和していくことを考えると、海外事業と Paypal 事業の強化が必要。Paypal で小口の金銭トランザクションを押さえてるわけだから、そこにメッセージングなトランザクションをうまくミックスすると最強かも、という考え方かと。

eBay の Paypal 事業の強化という側面では、こんなニュースもある。

eBay が VeriSign の決済ゲートウェイ事業を買収へ
http://japan.internet.com/ecnews/20051011/12.html

eBay (NASDAQ:EBAY) と VeriSign (NASDAQ:VRSN) は10日、両社が戦略的提携を結んだことを明らかにした。広範な提携の一環として、eBay のオンライン決済サービス子会社 PayPal が、VeriSign の決済ゲートウェイ事業を買収するという。

PayPal は、VeriSign の同事業を、約3億7000万ドル相当の現金もしくは eBay 株式、あるいはその両方で買い取る。買収手続きは年内に完了の見込みだ。VeriSign の決済ゲートウェイ事業は、PayPal の販売業者向けサービスプラットフォーム事業に統合となる。統合により、ゲートウェイ事業は2006年、売上高にして1億ドル、プロフォーマベースの営業利益率にして20%の業績をあげる見込みだ。

というわけで、eBay の Skype 買収については、複眼的要素のあるイベントなので、完全にとは言えないが一つの見方としてはある程度腑に落ちたような気がする。

あと、議論の途中で法人市場へのインパクトというラインで話を振られたのですが、後知恵的には、法人市場は SaaS (Software as a Service) やユーティリティ・コンピューティングとの関わりで見る必要があり、その軸では、salesforce.com がやっぱり要注目でしょうね。